一般質問のテーマ数(質問・提案)ベスト50をご紹介
過去2年間に県内の市町村議会で行われた一般質問10,444件を、テキストマイニングという分析手法により、主要なテーマごとに整理・分類したリストをベスト50として公開します。
1.分析の目的
本分析は、私たちが住んでいる市町村行政への関心を高めるために、「どのようなテーマが多く問われているのか」を分かりやすくご紹介することを目的としています。
2.利用方法
情報の把握: 県民の皆さんには、どのテーマに多くの意見や質問が寄せられているかを確認することで、地域の関心事や行政の重点施策を理解することができます。
議会活動の参考: 議員の皆さんには、今回の分析結果を参考に、今後の議会運営や政策決定の際に、県民の関心や要望を反映させるための指針としてご活用いただけます。
行政事業の展開: 職員の皆さんには、分析結果を通じて、各テーマに関する実態や課題を把握し、業務改善や市民サービスの向上、さらには新たな政策提案に役立てることが可能です。
3.分析結果(テキストマイニング)
順位 | テーマ | 主なキーワード | 件数 |
---|---|---|---|
1 | 防災対策 | 防災、避難、災害、備蓄、危機管理 | 895 |
2 | 子育て支援 | 子育て、保育、幼児、待機児童 | 806 |
3 | 教育行政 | 学校、給食、教育、部活動 | 671 |
4 | 農業振興 | 農業、就農、作物、出荷 | 537 |
5 | 財政健全化 | 予算、補助金、財政、交付金 | 493 |
6 | 公共交通 | バス、タクシー、交通、デマンドタクシー | 403 |
7 | 環境保全 | 環境、再生可能エネルギー、ゼロカーボン、メガソーラー | 381 |
8 | 行政DX・マイナンバー | DX、マイナンバー、デジタル化、行政システム | 359 |
9 | 医療・介護 | 医療、介護、健康、保険 | 337 |
10 | 施設管理・改修 | 施設、改修、耐震、維持管理 | 314 |
11 | 防犯・安全 | 防犯、交通安全、カメラ、照明 | 305 |
12 | 地域活性化・観光 | 観光、PR、イベント、名所 | 292 |
13 | 自治・住民参加 | 住民、自治、協働、意見収集 | 283 |
14 | 保健・福祉 | 保健、福祉、健康増進、支援 | 274 |
15 | 子ども・教育環境 | 児童、生徒、学校環境、学力向上 | 264 |
16 | 農業政策 | 農業政策、補助金、農業法、産業振興 | 255 |
17 | 都市計画・まちづくり | 都市計画、まちづくり、地域計画、街並み | 247 |
18 | 商工業振興 | 商店街、企業誘致、起業支援、商工会 | 238 |
19 | インフラ整備 | 道路、橋、上下水道、公共工事 | 230 |
20 | 災害対応・復興 | 復興、原発、損害賠償、震災対策 | 222 |
21 | 情報公開・透明性 | 情報公開、透明性、説明責任、データ共有 | 213 |
22 | 環境問題・循環型社会 | ごみ減量、リサイクル、循環型、環境対策 | 202 |
23 | 人材育成・労働環境 | 職員、働き方、労働環境、人事制度 | 192 |
24 | 地域医療・健康施策 | 地域医療、病院、診療、救急体制 | 184 |
25 | 防災無線・通信 | 防災無線、通信、情報伝達、避難指示 | 175 |
26 | 空き家・空き地対策 | 空き家、廃校、老朽施設、利活用 | 167 |
27 | 地方創生・移住促進 | 移住、定住、地方創生、交流人口 | 156 |
28 | 税・補助金制度 | 税制、補助金、交付金、財源確保 | 148 |
29 | 環境行政・規制 | 環境条例、法規制、盛土規制、河川管理 | 139 |
30 | 産業支援・公社設立 | 農業公社、産業団地、支援策、経営安定 | 131 |
31 | 行政サービス向上 | 窓口、サービス、相談体制、デジタル窓口 | 122 |
32 | 国保・医療保険 | 国民健康保険、保険証、医療費、給付 | 112 |
33 | 脱炭素・再エネ | 脱炭素、再生可能エネルギー、カーボンニュートラル | 103 |
34 | 文化・歴史・伝統 | 文化財、歴史、伝統、郷土資料館 | 94 |
35 | 運輸・物流 | 交通網、物流、配送、運送支援 | 85 |
36 | 国際交流・観光誘致 | 国際交流、インバウンド、台湾、友好都市 | 76 |
37 | 住民生活支援 | 生活困窮、福祉支援、医療支援、住宅支援 | 67 |
38 | 中小企業支援 | 中小企業、事業承継、経営支援、補助金 | 58 |
39 | 災害時業務継続 | 業務継続、BCP、災害備蓄、非常時対策 | 49 |
40 | 公共施設利用促進 | 公共施設、図書館、体育館、市民プール | 40 |
41 | 投票・選挙対策 | 投票率、選挙、公約、投票支援 | 31 |
42 | インフラデジタル化 | インフラ、デジタル、ICT、データ可視化 | 22 |
43 | 情報通信の改善 | 情報通信、ネットワーク、スマホ、LINE | 17 |
44 | 災害リスク情報提供 | ハザードマップ、リスク情報、危険箇所、災害情報 | 13 |
45 | 予防接種・健康診断 | 予防接種、健康診断、乳幼児健診、がん検診 | 9 |
46 | 防火・防犯 | 防火、火災対策、消火設備、火災警報 | 8 |
47 | 介護・福祉施設整備 | 介護施設、福祉施設、バリアフリー、設備更新 | 7 |
48 | 学校設備整備 | 学校設備、ICT機器、教室改修、新設 | 6 |
49 | 市民広報・情報発信 | 広報、SNS、情報発信、ウェブサイト | 5 |
50 | 総合行政運営 | 行政運営、組織改革、業務効率化、管理体制 | 4 |
その他 | 3 |
- 分析(テキストマイニング)は、ChatGPTを利用しています。
- 各項目は「テーマ」、「主なキーワード」、「件数」の形式で示しています。たとえば、テーマ「防災対策」には「避難」「備蓄」「防災計画」などのキーワードが含まれ、そのテーマに該当する質問が〇〇件と集計されています。
- 質問中に複数のキーワードがある場合、重複カウントしないようにしております。件数については、参考値となることをご了承ください。
(参考分析1)トピックモデリングとクラスタリング
1万件を超える質問文書を対象に、文書全体から潜在トピックを自動抽出。複数のトピックの寄与度を算出し、代表的なキーワードを抽出しました。
意味的に近い質問群をグループ化し、時系列での変化や傾向も可視化しました。
表は、全体の割合に基づくトップ10 ※ChatGPTを使用
番号 | テーマ | 代表キーワード | 全体に 占める割合 (概算) |
1 | 行政財政・予算関連 | 予算、補助金、税収、会計、財政 | 15% |
2 | 子育て・保育支援 | 保育園、待機児童、幼児、子育て | 12% |
3 | 防災・災害対応 | 避難所、消防、地震、緊急、備蓄 | 10% |
4 | 教育改革・学校行政 | 学校、教育、学力、教員、カリキュラム | 9% |
5 | 高齢者福祉・介護 | 介護、健康、高齢者、福祉、支援 | 8% |
6 | 交通安全・インフラ | バス、道路、信号、歩行者、自転車 | 7% |
7 | 地域振興・観光 | 観光、商店街、地域振興、イベント | 7% |
8 | 環境・エネルギー | 環境、リサイクル、再生可能、エネルギー、省エネ | 6% |
9 | IT・DX(デジタル化) | DX、ICT、デジタル、IT改革 | 5% |
10 | 市民参加・行政コミュニケーション | 住民、広報、意見、参加、対話 | 5% |
クラスタリングによるグループ化
意味的に類似した質問が以下のようなグループに分類されました。
① 行政運営全般と財政
② 子育て・保育支援と教育関連
③ 防災・災害対応と安全対策
④ 地域振興・観光・インフラ整備
⑤ デジタル化、IT改革、DX推進
など、各グループごとに細かい課題や政策提案が抽出され、各グループ内での質問内容の共通点と相違点が明確になりました。
分析結果の活用方法
政策検討の参考
各トピックの割合やキーワードをもとに、どの分野で議論が活発に行われ、どの分野が注目されているのかを視覚化することで、今後の政策検討や優先課題の設定の参考にできます。
議会・職員向けの情報共有
トピックごとの詳細な分析結果やクラスタリングのグループ化結果をもとに、議会や職員が現在の課題認識を共有し、具体的な施策の議論や改善提案の基盤とすることが可能です。
(参考分析2)感情分析と意見の傾向解析
テキストマイニングの他に、様々な分析方法があります。
下記は、感情分析と意見の傾向解析です。ChatGPTで行っています。
全体の感情分布
約60%が中立的な表現
約25%がポジティブな感情
約15%がネガティブな感情
テーマ別の傾向
移住促進関連:議員からは前向きな意見が比較的多く、全体のポジティブ感情率は約30%に達している。
防災対策関連:安全面への懸念や改善要求から、ネガティブな感情がやや強調され、ネガティブ率は約20%程度。
行政運営・財政関連:事実確認や情報提供に焦点が当たっており、中立的な意見が多数を占めています。
分析結果の活用方法
政策評価の指標として
各テーマに対する感情分布を参考に、政策の実施状況や改善の余地を客観的に評価できます。たとえば、防災対策や移住促進について、どの程度住民や議員が肯定的/否定的に感じているかを把握することで、今後の施策見直しの根拠とすることが可能です。
定期的なモニタリング
今後、一般質問のデータが蓄積される中で、同様の感情分析と意見の傾向解析を定期的に実施することで、議論の変遷や住民の意識変化をモニタリングし、行政の意思決定や施策評価に活用することが期待されます。
一覧作成・分析して感じたこと
約2年間 10,444件の一般質問を掲載していますが、すべての一般質問を掲載していません。議会だよりと質問項目を参考に一覧作成をしていますが、1つの質問項目の中に、さまざま視点(テーマ)がある場合は、一覧への転記が難しいのが現状です。
よって、一般質問数は、1.1~1.2倍程度あると考えています。
分析については、当初、無料のテキストマイニングサービスを利用していましたが、質問件数1万件、文字数23文字を超えているため、無料サービスは利用できず、協力者に応援をいただきChatGPT(有料版)を利用して分析を行いました。テキストマイニングの前処理(同類の語句の把握等)のすばらしさを感じています。また、さまざまな分析方法ができることも知りました。
もっともっとChatGPTや分析方法の知識を得ることができれば、さらに詳しくご紹介できると思いますが、まずは、現在までできたことをご紹介します。
せっかくみんなでつくった一覧です。
さまざまな活用方法を探っていきたいと思います。
今回の分析について、下記の方々からご協力をいただきました。
心より感謝申し上げます。
・京都大学法学研究科大学院生 松野大河 様
・合同会社つなぐ 様 (福島市)